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DNA鑑定学会 特定非営利活動法人(寄付受付指定機関)
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小豆および小豆あんの妥当性検証報告書の要約
DNA鑑定学会 H21.4.7

1.妥当性検証の概要
 農林水産省生産局知財課の「平成20年度登録品種の標本・DNA保存等委託事業のうちDNA品種識別技術の妥当性確認事業」として、当学会が小豆および小豆あん品種識別マニュアルの妥当性を検証した。

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2.妥当性の内容

2.1 妥当性検証の対象物
    ・品種識別マニュアル
      北海道立中央農業試験場 竹内氏作成 H20.6.30版
    ・検査する基準小豆の提供元
      北海道立十勝農業試験場 小豆 8品種
    ・検査する市販品小豆
      一般種苗店より購入 2品種

2.2 小豆の品種純度検査
     代表的な2品種に対して、1つの品種を100粒混合した中に他品種の混在があるかチェックしたが、他品種のマーカーは検出されなかった。
    また、1粒検査でも、10粒×3社=30粒検査したが、他品種のマーカーは検出されなかった。

2.3 品種識別の検証
     検証は、表1の採取したサンプルを、表2のSSRマーカーで品種識別検査をおこなった。
    検査機関は公募で募集し、ISO9001を取得している民間3社へ依頼した。

    表1 採取したサンプル
    品種検査粒数品種検査粒数
    基準小豆
    エリモショウズ10きたろまん5
    サホロショウズ5アカネダイナゴン5
    しゅまり5ほくと大納言5
    きたのおとめ10とよみ大納言5
    市販の小豆
    サホロショウズ10きたのおとめ10
    表2 SSRマーカー絶対値テーブル
    品種名 SSRマーカー(増幅断片長bp.)
    CEDG
    008
    CEDG
    024
    CEDG
    015
    CEDG
    029
    CEDG
    007
    CEDG
    035
    CEDG
    021
    CEDG
    011
    CEDG
    041
    エリモショウズ 120 141 213 185 130 160 173 152 116
    サホロショウズ 116 141 213 157 130 160 175 152 116
    しゅまり 120 141 213 179 130 160 165 152 116
    きたのおとめ 118 141 213 185 130 160 151 152 116
    きたろまん 120 141 209 159 130 160 173 152 116
    ホッカイシロショウズ 110 141 251 185 128 158 173 166 112
    きたほたる 120 141 213 191 128 158 169 152 118
    アカネダイナゴン 110 141 249 185 130 158 173 166 112
    ほくと大納言 110 141 249 185 128 160 175 152 116
    とよみ大納言 120 141 213 195 130 158 173 166 116
    ときあかり 120 141 213 185 130 160 173 166 114

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3.検証の結果
    1)測定は絶対値測定でおこない各社のデータにバラツキがでていた。
      原因は、各社で検査機器が異なるなど、検査環境が同一でなかったためと思われ、図1に示すようにバラツキの幅は±1程度であった。


    図1 バラツキの幅

    2)各社間のデータに差異があるが、個々の社のデータを見ると、社内バラツキがない。1品種の3粒を測定した1マーカーの例を表3に示す。

    表3 測定値
    社名 1粒目 2粒目 3粒目
    A社 121 121 121
    B社 119 119 119
    C社 120 120 120

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4.評価
     妥当性の評価は、一般市場でDNA鑑定を利用しても耐えうるか否かの観点から評価した。
    そのために、基準株としての小豆の評価と、品種判別マニュアルの評価およびマーカーの評価を表4の評価表に示す。

    表4 評価表
    基準株 今回採取した小豆は他品種の混入がなく非常に品質の高い株であるため、鑑定の基準株としても問題がないと思える。
    マニュアル マニュアルの改善が必要である。
    ・トラブルシューティングなどが無く、研究者でない人材でも使用可能なマニュアルとなっていない。(学会の品種識別マニュアルの目次を参考とする)
    ・品種判別の基準表(page12)に誤りがある。
    マーカー
    認証率
    認証率はマーカー測定値のバラツキ幅:±1までを正解値として算出した。
    絶対値測定での認証率:約32.7%
    相対値測定での認証率:95%
    相対値測定とは、基準品種DNAと被検体とを一緒に測定し、その差分で異同を評価する方式で、この方式は同時測定するため、検査環境に影響しないという利点がある。
    妥当性総合
    評価
    相対値測定では高い認証率が確保できるが、絶対値測定では、検査環境が個々にことなるため、現在の状況では現実的でない。

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5.今後の改善策
    1)マニュアルの標準化
     品種判別マニュアルには親切なマニュアルや不親切なマニュアルがあるため、ISOのマニュアル作成基準を参考として標準化する。
    2)実験条件
     マーカーを開発した実験環境と、検査をする実験環境が違う。また、検査会社間でも実験環境が異なるなど、現状では同じ条件で検査を実施させることは不可能である。そのため、同一の検査条件を得るためには、基準品種DNAと被検体DNAを一緒に測定、あるいは並行に測定し、相対値で品種判別させる。こうすることで、検査条件の違いを解決することができる。
    3)品種識別マーカーと実験マニュアルの品質保証
     品種識別マーカーと実験マニュアルの品質はそれぞれ独立に保証する。マーカーは実験手法に関係なく、品種識別能力について保証し、実験マニュアルは、マーカーの検出手法について保証しなくてはならい。

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6.今後の指針
     今回、妥当性確認事業を実施した結果、DNA鑑定は既に実施されている成分分析検査などの既存検査手法に比べ、決めなくてはならない課題が多くある。そのため、DNA鑑定における方向性を表5に今後の指針を表す。
    表5 今後の指針
    項番項目内容
    基準株のデータ・ベース化 基準株の保管および分譲窓口を管理公開する。
    高信頼性マーカーの開発 今後、マーカーの信頼性を向上するためには、塩基配列のゲノムを基本としたマーカー開発が望ましい。
    ゲノム解析検査 塩基配列でDNA鑑定をおこなう。

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